これは想い出。あくまで個人的なエピソードです。どう捉えるかはお任せします。
出逢いというのは上手くいっているようでも性急ではいけない、今の私にはそんな想い出です。
今なら出会い系サイトなんてのやネットがあるから、女性との出逢いの機会は多いのでしょうか。 その昔はダイヤル・キュウツー、テレクラなんてのもありました。それより昔は紹介によるお見合いがありました。ツテや親類縁者がアレコレとふさわしい人、マッチングを考えていたのです。
やはり昔から出逢いを求めて人は悶々としていたのです。当サイトでご紹介したように三島由紀夫はお見合いに活路を見出したわけですw。
すると今の時代はネットの普及と情報化で出逢いの手段はもっと多様化しているのでしょうか。
いや、意外とそうでもないのかも知れません。 最近ではコロナ禍もありましたし、パパ活だのママ活だの言ってはいますが、それは結局はメディアの作り出した都市伝説かも知れません。
なにしろ知らない相手と打ち解けるには時間が必要なはずだからです。
そうでなけばただの乱交になってしまいます。
決して永続的な信頼関係ということにはなりません。
お互いの呼吸、それは大事です。
スレ違いのままタイミングが合わず機会を逸してしまうことだってよくあることです。
そうなれば仕方がありません。諦めてまた次に進むしかないのです。
そういう不運にいつまでも拘泥していると後になって後悔をするものです。「見切り千両」なんて言葉があります。駄目なものはダメなのです。
最初の段階でくじけてしまうのはむしろ幸運かもしれないのです。
逆に長く一緒に連れ添ったのに簡単に見切ることほど愚かなことはありません。それこそ「早合点」「早決めの勇み足」ということになります。
さて、それはある年の暑い夏の頃でした。私はパソコン通信で知り合った女性といきなり会ってみたことがありました。
もちろん顔も声も知りません。会うまではお互いに知らないままでした。
それはインターネットのまだない時代でした。
知り合ったのは「パソコン通信」に掲示を出していた人に返事を返したことからでした。
「パソコン通信」 というのは、今のインターネットのような自由なつながりよりもちょっとだけハードルがあって「会員登録」なんて手続きがあって、今よりは閉じたコミュニケーションでした。
それはちょうど今の婚活サイトぐらいではあったでしょうか。
そこに掲示板というものがあり、「野外コンサートのチケットがあるから誰か一緒に行ってくれないか」、そんな女性からの呼びかけを私が見つけたことから始まったのでした。
私はパソコン通信という非日常での出逢いを密かに喜んだものです。
しかし今思えば、彼女には男性からたくさんのレスがついていたはずです。 だから、私の方が彼女に選ばれたという方が正確でしょう。私の何がよかったのか。
そんなことがその後にも何度かありました。今でも不思議に思います。私はこれまであまりモテたという実感はない人間です。
そんな女性からの呼びかけに私はどんな風にレスを返したかというと、もう昔のことなのであまり覚えてはいませんが、かしこまることもなく、くだけた様子でごく素直に「ご一緒したい」とか「レゲエが好き」そんなメッセージを送った覚えがあります。
つまりごく自然体ということです。
いつも私は自然体でした。何も目標も考えないし想定もしなかった。顔の見えない世界ではそうした態度が逆によかったのかも知れません。
やがて彼女は待ち合わせ場所を指定してきて私たちはイベント・コンサートへ一緒に行く約束をしたのでした。
やり取りはそのぐらいだけでした。相手の顔も知らないので場所の確認とお互いの目印を決めただけです。 それから当日までグダグダと無駄なやり取りをすることもありませんでした。
もしかすると彼女は他の男たちを断るのに忙しかったのかも知れません。なにしろ数千という閲覧履歴がついていたのですから。
どんな空間であれ、そんな女性からの呼びかけには無数の男達が関心を持つものです。それこそ蜜に群がる蟻のように男性たちが興味を示してやってきます。今でもそうでしょうが昔だってそうでした。
なんとかして会おうと、色んなことをアノ手この手で呼びかける連中もいるものです。
きっと強くアピールする男性も大勢いたことでしょう。
一方、こういう時には私は甘い言葉をあまりかけないものでした。むろ控えめにしていたものです。そんな言葉なら運命の出逢いの人のためにとっておいたほうがマシだ、そう昔から思っていたから。まあ、その当時だってそんな青臭いことを言えるような年齢ではなかったのですがw。
しかし、だいたい顔も分からないうちからドキドキと妄想を働かせてしまうなんて、どうしようもないではないか、と、私は思うのです。最初から諦めてかかっていた方が傷つかなくてすむ、私は鷹揚に構えていた。
だいたい、そういう期待しすぎるような男性に限って会ってみてガッカリなんてことを露骨にするものです。出会った相手に対して失望感を隠さなかったりします。
そんな現金な態度というのも私には相手に失礼に思えます。
結局、私はと言えばお互いに電話番号も知らせず、ただパソコン通信のIDだけのやり取りで会うことを決めたのでした。
当日、私は持ち込む酒を買い込んで待ち合わせ場所にいました。
酒ぐらいなくては踊れない。多少はオヤジ気味になったとは言ってもまだ踊れるぐらいの年齢ではありましたw。
そこに来たのは適齢期は過ぎていたけど、ちょっとビックリするぐらいチャーミングな女性でした。
私は驚いた。
顔も知らないまま会うことを決めていたので特に期待も何もなかったから私はちょっと面食らったものです。こんなか弱い女性が不特定多数の掲示板にメッセージを出したのか、と。
小柄な女性で、彼女は肩の出たサマーニットのワンピースを着ていた。
腹も出ていず、小柄ですがプロポーションは素晴しかった。体にフィットした服装で、服の色こそ地味でしたが胸の膨らみは目を惹いたものです。
そのとき、彼女はネットの掲示板での打ち合わせには出なかった女友達を連れてきていて、その女友達も酒を持ってきてくれていました。それはとてもありがたかったw。
二人きりでなくなったのは私には少し残念に思えたものですが。
ボディガードのためなのか、彼女とは対照的ないかにも遊び人という感じの女友達でした。
大柄で体格がよく、派手な色使いのサイケ調、キラキラしたインド風のシャツを着ていて胸元のボタンを大胆に開け、陽に焼けた首筋にネックレスが光っていた。 いかにも快活といった感じのアネゴ肌の性格が窺える、そんな女性でした。その女友達は初対面の私に物怖じもせずに笑いかけ、すぐに私たちは打ち解けたものです。
いかにもレゲエが好きそうなセクシー系の女性だと私は思った。もちろん、まるでオーラのように彼女にはカレがいるというのが分かります。
当の彼女はと言うと、背が小さくてオカッパのストレートヘア。とても大人しそうな人でした。
スタイルはよく見えた。古臭い言葉ですが「トランジスタ・グラマー」という感じだったでしょうか。モテないような女性には見えなかった。
しかしなにしろ背が小さい。私の胸ぐらいの高さに彼女の頭があったのです。
三人で場所に向かいます。私は両手に花というわけです。
道すがら、同じことをその女友達がからかうようにして私に言ったものです。
派手な女友達の馴れ親しさに対し、いかにも彼女は大人しく控えめで遠慮がちに思えました。
「友人同士」と言っても、二人は友人同士として吊り合いが取れているようにはあまり思えなかったものです。
だから、ふと、この女友達に篭絡されるのかどうか彼女は私を試しているのかも知れない、と、それが私にはすぐに分かった。
私は身構えたものです。 軽いオトコには見られたくはありません。
私はいつもそんな風に自分への義務感みたいなものを感じてしまう性分です。 安く見られたくはない。自分は他人に見られているのだ、と、妙に自意識があります。そんな風に自分の体面ばかり考えているものだからチャンスをフイにすることもしばしばでしたがw。
そう思ったので、私は今回のコンサートを誘ってくれた彼女の顔を立てるようよく注意するようにしようと思いました。
いくら女友達が気さくで話しやすい女性としても、まず彼女の方へこそ気遣うべきなのだ、と。
そうして、私たちはお互いのことをポツポツと話しながら会場に向かったのでした。
彼女は旅行代理店で働いているのだと言います。
実際、話してみると掲示板のやり取りでの印象通りで真面目で控えめな女性でした。
女友達の方はといえばまるてハシャぐようにして道中をスキップしていた。賑やかな人だったw。
歩道がすっかり混んできたので、私は二人の手をそれぞれ握って、はぐれないように注意した。 何気なかったからか彼女たちは別に気にしてないように見えましたが、私には両手に花の気分でしたw。
あまりない機会で、私は本当にウキウキしてしまったものですw。
それは暑い夏の日の夕暮れでした。
会場に着くといよいよ野外コンサートが始まりました。
私たちは芝生に座り込み、音楽を浴びるようにして聞いて寛いだ。
熱心に演奏を聴こうとする客はステージの近くで立ち見をし、そこは客でひしめいていました。 私たちは後ろの少し離れたところにいるグループです。そこではみながめいめい酒盛りを始め、余裕のあるスペースを確保してとても寛いでいた。後ろの観客たちはそれぞれ宴会を始めていたわけです。
家族連れ、恋人、友人同士、バーベキューみたいなことを始める連中もいた。
離れていてもバンドの音はよく聞こえます。
バンドはみなレゲエが中心で、いくつかのグループが交代で演奏をしていました。どれも大したバンドではなかったけれど、自由な雰囲気が会場を満たしていた。
夏の暑さも夕暮れなので気温も過ごしやすく暑さも緩んでいた。悪くない。私たちは酒を大いに飲んだものです。
ふと、彼女は立ち上がると前のステージの方へと行った。
後ろの酒盛りグループとは違って前の方は踊ったり演奏に喝采しています。連中は立ったままです。彼女もバンドがよく見えるようにと、そこへ近づいていったようでした。
私は女友達にちょっと断って「一緒に踊ってくるよ」なんて言った。
アネゴ肌のその女友達は心得たようにして当然そうに頷いたものです。彼女を人混みで一人にさせるのはいけません。 女友達は快く荷物の確保を引き受けてくれた。
私はビールの缶を持ったまま彼女の立っているところに近づいていきました。
真後ろにつくと、彼女はこちらを振り返った。ストレートの首ぐらいまでの髪が揺れた。
「踊ろうよ」、と、私は声をかけた。
私にはボディガードのようなつもりもありました。何もないよう目を配っておかないといけません。それこそオトコの名折れというものだろうと私は思ったw。
彼女は私の顔を見上げて頷くと、私の体の動きに合わせるようにして体を揺らし始めた。 音楽が心地よく響く。
ふと彼女の体が私に触れた。彼女の体の起伏が手に取るように分かった。
私は後ろから彼女の手を握り、抵抗がないことを確認すると恐る恐るもう片方の手を彼女の腰に回してみた。
彼女はまるで気が付かないような風情で、黙って演奏を見ながら体を動かし続けています。
すると私はもう少し大胆に腰に回した手をもっと強くチカラをこめた。
音楽のリズムを感じながら彼女は私に体を預けていました。 私はその体を支えるようにしていた。 ストレートの髪のシャンプーの匂いが鼻に漂ってきます。見下ろす彼女の顔は音楽に陶酔したような様子で、体をゆっくり左右に動かしている。
彼女の体のあちこちが私に不規則に触れた。彼女の肉体の感触が私を誘った。 だんだんと胸の奥が興奮してくるのが自分で分かった。
バンドの演奏は続いているのに、それが耳から音楽が遠ざかったように感じられ、彼女がそばにいることだけが強く感じられたものです。 手にした酒缶を飲んでいても私はまるで酔わなかった。
私はさりげなくしながらも、できるだけ彼女を全身で感じようとした。彼女もそんな気分だったように思えました。
そのうち、気がつくと私はもはや興奮が隠せないぐらいになっていました。
無意識に私は後ろから彼女の尻に硬くなった自分自身を押し付けていました。彼女の体を抱えるように後ろからその腰に手をやり、彼女を揺らしていた。
彼女も私の状態には気が付いていたはずです。
しかし彼女は何も言わず、嫌がる風でもなく私に体を預けたまま一緒に体をリズムさせている。
次第にまるで擦りつけるようにして彼女は自分から私に自分の尻を押し付け始めた。小さな体に堅くて丸い均整の取れた尻の形が私にはまざまざと分かった。
私は太腿のあたりでその尻の弾力を感じていました。彼女は背が小さかった。
抱えた彼女の腰にやった自分の手がじっとりと汗ばんでいるのを私は感じました。そこからどこにも動かしようもないぐらい自分の手が硬直してしまった気がしたものです。汗ばんでいるのは暑さのせいじゃないのは分かっていた。
音楽は最高潮、うっとりとして私は彼女の体を揺らし続けた。
随分と長いことそうしていた気がします。ガチガチになった私自身はまるで収まる気配がありませんでした。
とうとう私はふいに首をかがめると、下の彼女の肩の露出した素肌に唇をつけたのです。それは自然な欲求からのものでした。
ハッとしたように彼女はピクりと体を反応させたものです。
私は「ゴメン、つい」なんて言い訳をした。それでも彼女は何も言わず穏やかなままだった。リズムを取る動きは変わりません。彼女はまだ私にそのヒップを押しつけていた。衣擦れの音さえ耳に入ってきます。私はまるで思春期の少年のようにドキドキしてしまっていた。クスっと彼女は笑ったように私には見えた。恍惚とした時間はそうして続いたのでした。
ひととおりバンドの演奏が終わり、夕暮れのコンサートイベントは終幕に向かっていました。
私はやっとの思いで彼女の腰から自分の手を引き剥がすと、二人で女友達のところに戻りました。
女友達の方はと言えばサンダルを芝生で脱ぎ、豪快に笑い、隣になった連中と冗談を言い合っていた。
そろそろお開きです。私たちも帰り支度をして帰路につくことにしたのでした。
会場の整理が進んでゆき、元来た道を大勢の人々が列をなして帰ってゆきます。
コンサートの盛り上がりを話しながら歩いていると、突然、女友達は「まだ帰る時間には早い」と言い出し、私たちは三人で飲み直すことにしました。
きっとまだ私たちが打ち溶けていない、もう少し時間がかかる、そんな気の回し方をしてくれたのかもしれないと今では思います。
駅近くで空いている手頃な居酒屋を見つけると、私たちはビールやツマミを注文して改めて自己紹介をしました。
確かにお互いに色々と知らないことが多過ぎました。お互いに分かってるのは音楽のノリと体を互いに揺らして擦り付けたさっきの感覚。
しかし結局、酒の話、ディスコの話、音楽の話なんかになってしまいましたw。
彼女は居酒屋でもやはりあまり喋らなかった。
コンサートでの様子、実際の話はあまり出なかった。女友達と私たちは別々に過ごしていたから話があってもよかった。彼女が触れられたくなかったのかどうか、それは私には分からなかったけど。
「今度、米軍基地で祭りがあるから遊びに行かないか」そんなことを言って私は次の機会を誘ってみた。
さんざん飲んで女友達は大いに盛り上げていました。私が誘うのを見て「行ったらいいじゃない」なんて助け船、彼女に言ってくれたものです。
結局、女友達本人はあまり米軍基地の祭りには関心ないらしかったけど、彼女の方は「行く」と言ってくれた。
今度こそ二人きりになれるだろうか、私はそんなことを考えたものでした。
暫くすると、女友達は店の赤電話を使うと「用が出来た」と言いました。そして彼女は金を「割り勘」だと言って置くと先にとっとと帰ってしまった。何か気の利かせ方があったかも知れないと私は思った。
「楽しい人だね」、私は彼女に女友達を連れて来てくれたせいで盛り上がったことの感謝を伝えました。
我々も会計して帰りましょう。
「米軍基地の祭りの頃になったらまたメールするよ」、私はそう言った。
会計を終えると彼女はトイレに行った。
ふと思いついて私は彼女を追いかけてトイレの外で待った。
出てきた彼女は私を見上げるとかすかに笑った。私はその肩を正面からそっと抱きしめると首筋から肩へと唇をゆっくり這わせた。
彼女は手を下ろしたまま特に抵抗しない。 手を尻に回し、撫で回してみましたが彼女はされるがままです。
私はもうその場でどうにかなってしまうぐらい昂揚してしまっていました。彼女がとても愛しく思えてきた。度重なる物理的な接触で情がこみ上げてきたのかも知れなかった。
しかしいつ人が来るかも知れません、そこは出口付近、トイレへの通路です。
私は焦りながらもこれを最後にと背をかがめると、無言のまま唇を彼女の唇に重ねようとしました。
すると、彼女は手でその手を遮って下を向いて私を抑えたのです。
「キスはまだ早い」、きっとそんな意味だったんでしょう。私はそう思った。
私は「ゴメン」なんて間の抜けたことを言うしかありませんでした。
彼女は相変わらず控えめだっけど微笑していたから怒らせたわけではなさそうでした。最初から最後まで言葉の少ない女性でした。私をどう感じていたのか、それは分かりません。
私たちは駅で笑顔のまま別れたものです。
私の唇には彼女の首筋のウブ毛、肩口のすべすべした感触がまだ残っていた。
それからまた繁華街を私はひとりで飲み歩き、その日の余韻を味わったものです。その日の出逢いにワクワクしたとてもいい気分だった。
多くの男性にこういう傾向があるのはアタシは後に知ることになります。
自己完結してしまいがちなのです。
ひとときの恍惚に満足してしまう。そしてすっかり継続的なこと、計画性や連絡なんかを忘れてしまう、そんな男性は多いようです。
私はおかげですっかり酔っ払ってしまった。
どこかにあった血のたぎりはもう消えていました。恋が始まって終わったかのようにさえ思えたものでした。
とうとう終電ギリギリを逃してしまい、その夜はサウナに泊まった。
あの時、彼女はどんな気持ちだったのでしょうか。
以上、ここまでが私のエピソードです。
何かを感じていただけたら幸いです。